2008-12-14

いじめ―教室の病い


いじめ―教室の病い (単行本)
森田 洋司 (著), 清永 賢二 (著)
出版社: 金子書房; 新訂版版 (1994/06)


かつて卒論を書いたときに、この本について批判的に議論をしました。

多くいじめ本は、自分勝手な印象論に基づいた、いい加減な分析をします。そんな中で、森田さんの議論は、客観的な計量分析に基づいており、いじめ本の中では、出色のデキといえるでしょう。

議論の中心は、いじめの4層構造(加害者-被害者-観衆-傍観者)を明らかにし、いじめの発生数と傍観者の数との間に相関関係を見出したことにあ ります。そして、その分析に基づき、彼が主張するいじめ解決法では、この相関関係を根拠に、傍観者にいじめを抑止する役割を与えています。

しかし、実は、この点が、まさに問題点なのです。

まず、第一に、相関関係と因果関係とは異なります。したがって、いじめ防止策を、この相関関係に求め、傍観者にいじめ防止役割を与えることは、論理的に成立しません。

第二に、アクセルロッドのNormゲームが示すように、この手のサンクションは、崩壊する運命にあります。結論だけを言えば、違反者を罰すること自体が、ジレンマになるからです。

つまり、傍観者にいじめ抑止役割を与えることには、以上のような難点があるのです。

ただし、このような批判が成り立つとしても、やはり、いじめ本の中では、飛びぬけて完成度が高いと思います。この手の、きちんとした分析をする人が増えればいいのになあと、よく思うのですが

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