2008-12-14

複雑さに挑む社会心理学―適応エージェントとしての人間

複雑さに挑む社会心理学―適応エージェントとしての人間 (有斐閣アルマ) (単行本(ソフトカバー)) 亀田 達也 (著), 村田 光二 (著)
有斐閣 (1999/12)

進化をメタ理論に採用した社会心理学の入門書。

著者たち自身は、この本を

「主張が強い青臭い本」

と評しています。確かに、一般の入門書に比べれば、格段に青臭い。しかし、とても爽快な青臭さです。

社会心理学は、当初、個人と社会との関係解明を目的とした学問でした。同調実験などは、人間が、他の人間の行動に埋め込まれていることを示すよい例です。

しかし、認知革命以来、社会心理学の研究対象は、社会的な場面における認知研究に移りました。しかし、人間が社会で生きているのであれば、認知が 社会的であるというのは、当然な話。その意味で、社会的認知という言葉は、屋上に屋根を重ねる冗長さがあってしかるべき表現だったはず。

この本で著者たちは、社会心理学は当初の問題設定にもどるべきだ、と主張します。そして、人間と社会の関係解明に「適応(進化)」というモデルを 活用することを主張します。「適応(進化)」をメタ理論に採用すると、今までバラバラに存在した社会心理学の個別理論を、一貫してうまく説明できる可能性 を、著者たちが感じているからです。そして、個別理論を一貫した理論体系でまとめることこそが、個人と社会との関係を解明することへ近づく第一歩なので す。

進化が、今後の社会心理学の主流になるかはまだ分かりません。がしかし、有望な分野であることは間違いないと思います。その足がかりとなる一冊だと思います。

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