2008-12-14

蟻の兵隊―日本兵2600人山西省残留の真相

蟻の兵隊―日本兵2600人山西省残留の真相 (単行本)
池谷 薫 (著)
新潮社 (2007/07)

日中戦争後に、国民党へ引き渡されて共産党と戦った日本兵の話。

話は、ポツダム宣言受諾後から始まる。敗戦直後、中国大陸へ侵攻していた日本兵の帰還が始まった。しかし、山西省に侵攻していた日本兵の一部は、 なぜか現地逃亡という名の残留を命じられる。残留日本兵は、山西省の国民党軍閥である閻錫山へと引き渡され、中国共産党との戦いに巻き込まれてしまっ た、、、、。なんとか、生き残り日本に帰って来た日本兵も、日本政府から、現地逃亡兵の扱いを受けている。

この本では、なぜ、残留日本兵は、敵である中国国民党軍として、同じく敵の中国共産党と戦ったのか?、そして、彼ら自信の強い意思で、現地逃亡を決断したのか?、という疑問に迫っていく。

じつは、この不可思議な事実の背景には、中国国内での国民党と共産党との対立と、両者のアンバランスな軍事力にある。日中戦争のとき、国民党と共 産党は、協力して日本軍と戦った。しかし、日本が降伏した直後から、両者の覇権争いが再燃。その覇権争いに日本軍を利用したのが、共産党軍より軍事的に劣 る国民党だった。

驚くべきことに、日本制圧地域の獲得を狙った蒋介石は、ポツダム宣言受託後の日本軍に、中国共産党軍による武装解除を拒否することを命じる。さら に、武装解除の拒否により中国共産党軍から攻撃を受けた場合は、攻撃の撃退をも命じた。また、山西省にいた日本兵を現地逃亡の名で獲得したのが山西省の国 民党軍閥の閻錫山である。彼は、戦犯容疑の恐れがある日本軍の高級士官を、自信の軍隊へ日本軍を取り込むために、次々と懐柔していった。

「事実は小説より奇なり」という言葉がある
この言葉が似合う本は、これをおいて他におもいつかない。蒋介石、毛沢東、閻錫山、日本軍高級士官、河本大作など、、、戦前の超大物軍人が、それぞれの思惑で謀略をめぐらす様子は、複雑怪奇としか言いようがない。
そして、これほど複雑怪奇な話を、僕は今まで聞いたことがない。

これもまた、戦争が生み出す悲劇なんだろう。
そうとしか言いようがない。

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