2013-10-31

日本型モノづくりの敗北 湯之上 隆

日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ(2013年10月)
文芸新書・湯之上 隆
日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ (文春新書 942)


半導体技術者から半導体業界の社会科学者?あるいは、下世話な言い方をすると半導体業界評論家に転じたサラリーマンの苦労話。

ここ10年位、昔の言い方をすれば、日本の弱電メーカーが不調に陥っている。理由は、この本に書いてあるとおりで、改めてまとめると、垂直統合型の日本の電機メーカーが、水平分業で、かつアーキテクチャーをデファクト化したインテル・台湾ファンドリーメーカーに質(特に、マーケティング・経営)・量(製造量・コスト)の両面で負けています、、、ということなのだろう

湯之上さんが書いたものは、ネットを徘徊しているとアチコチで見かけることがあり、この本も、やっぱり、大きいところではいつもの主張を繰り返している、、気がした。まあ、新書とはそう言うものなんだろうけど。

彼の良いところは、一流の技術者から転じた割には、新技術開発をだけで全てを語ろうとしないところだと思う。技術を量産と新技術開発に分けたり、世の中のトレンドから受け入れられる技術(金になる技術・イノベーションのジレンマ)を検討したりと、技術とマーケティングや経営の両方を知っているからこそできる議論を展開しているところではないか。

大きな話の流れは、素人目からはなるほどーと思えることばかり。であればこそ、なんで日本の電機メーカーは彼の主張に少しでも耳を傾けないのだろうと不思議になってしまう。むしろ、巨額投資が必要なこの分野は、わかっていても簡単に方向転換ができないジレンマに陥っているのかも知れない。そして、彼の主張を受けて仮に方針転換したとしても、転換した先は、サムソンや台湾のファンドリーメーカーの二番煎じに過ぎない。まあ、この辺が、むずかしいところだ

しかし、彼の書いたものは、純粋に分析的というよりも、日立やエルピーダメモリへの恨み節が、奥底に常に流れているように見えるけど、その辺は書かなくてもいいんじゃないかと。あと、本の題名の「日本型ものづくりの敗北」は誇張しすぎというか、現実的には、半導体の話だから、やや大げさな気がする。まあ、液晶も負けている構図は、半導体と似たり寄ったりなんだろうけど。

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