2018-03-11

Casino

Casino
Universal Pictures(1995)


カジノ [DVD]

マフィアのボスに見込まれシカゴの敏腕ノミ屋(エース)が、カジノの敏腕経営者に転身し、同じく用心棒として送り込まれた親友のチンピラ(ニッキー)とともにカジノで経済的な成功をおさめる一方、結局のところ、マフィアのルールからのがれられず、身を亡ぼすノンフィクション。

ゴッドファーザーもそうだが、マフィア物の映画のオープニングシーンは荘厳だ。バッハのマタイ受難曲で始まるオープニングシーンは、映画登場人物の成功と悲劇的な没落を連想させる。

主人公のエースは、シカゴのカジノのノミ屋として大きな成功を収めていた。エースの能力の高さ目をつけたのは、ギャングのボスたちである。ギャングは、トラック組合の年金をラスベガスのカジノにも投資していた。そこで、エースをカジノの経営者としてラスベガスに送り込んだ。同時にボスたちは、チンピラのニッキーをエースの用心棒につけた。

エースとニッキーは、ギャングが経営するカジノビジネスの表の顔と裏の顔そのものもである。表面的には合法なカジノビジネスを、エースが仕切った。エースは元ノミ屋としての経験から、どのように客を儲けさせれば、最も多くの金を客から巻き上げることができるか?を知り尽くしていた。

しかし、カジノは綺麗ごとだけで経営できない。カジノは、ゴロツキやイカサマ師の巣窟でもある。イカサマ師やゴロツキからカジノを守るのがチンピラ・ニッキーの役割だ。口よりも先に手が出るニッキーは、ゴロツキやイカサマ師から、カジノの利益とルールを非合法な手段で守った。

エースの才能でカジノは大成功を収める。しかし、いかに合法的なビジネスで金を稼いでも、エースもニッキーも結局はチンピラであり、ゴロツキやマフィアの流儀から抜け出せない。陰に陽に暴力や脅迫で人を支配しようとするエースとニッキーは、最後には、暴力によって自らの身を滅ぼしてしまう。

見ていて、まさにゴッドファーザーを別の側面から眺めた映画だと思った。ゴッドファーザーのマイケルは、マフィアビジネスを合法化しようとし、カジノに進出するが、結局のところ、マフィアの流儀から抜け出せず、Part3では愛娘を抗争で失った。

3時間と長尺な映画。特に最初の1時間程度は、中盤から後半のための布石であり、内容の理解が難しい。しかし、中盤から後半にかけてのエースの成功から、ニッキーの暴走で始まる二人の没落は見ごたえがある。

エース役のロバートデニーロはもちろん、特によかったのは、ニッキー役のジョー・ペシとエースの妻役のシャロン・ストーンだ。ジョー・ペシのチンピラ感とシャロンストーンのバカ女感は特筆ものである。

悪者は不幸になるべきだという、普通の人が普通に願うことが、ベタにかなう胸をすく映画

2018-02-12

The Social Network



The Social Network
Columbia Pictures(2010)

FacebookのCo-Founderエドアルドから見たマーク・ザッカーバードのサクセスストーリーの負の側面

今や当たり前になりすぎた上に、かなり飽き気味のFacebookだが、日本で最初に流行ったSocial NetworkはMixiだった。ClosedなNet空間で個人的な情報を共有するという体験が新鮮だった。何かを書くと、誰かがポジティブな反応を返すという、儀礼的でありながら、他人とつながっている心地よさは、私を含めた多くの若者の本能に訴えた。

その後、Mixiは想像以上に膾炙し、親世代にまで広がった。Mixiに嫌気がさしたまさにその時に、次のメディアがあらわれた、それがFacebookだった。MixiがFacebookやMySpaceのパクリだと知ったのは、そのころである。

創業と成功にまつわる愛憎や妬みはよくある話だ。日本でも、意気投合して同じ未来を描いた二人の創業者が、権力争いをはじめる例は珍しくとも何ともない。もし、この映画が、ほかの些末な権力闘争と違うとすれば、この会社がSocial Networkを商売のネタにしているという点に他ならない。

人付き合い下手なオタクプログラマーのマークは、同級生のちょっとした思いつきを剽窃してSocial Networking SiteであるFacebookを、唯一の親友エドアルドと立ち上げた。有名大学生をターゲットにしたFacebookは、想像以上のスピードで拡大していく。が、会社の成長とともに、二人ができることと、会社に求めれれることが変化し、二人は別の道を歩む結果となる

プログラミングに対するマークの豊かな才能をベースに、人とのつながり(エリカ・エドアルド・ショーンなど)がエネルギーとなって、Facebookが成長する様は、まさにSocial Netの力そのものでもある。一方で、題名がSocial Netであるにもかかわらず、DVD表紙に書いてある言葉、「5億人の友達を作り、数人の親友う失った」というのは、まさに皮肉でしかない。

ストーリー展開も分かりやすくスピーディーで、とても面白かった。が、個人的にはまったのは、Jesse Eisenbergのオタクっぷりである。早口の天然パーマで空気読めないモテない理系秀才というのが、Nerd感満載なのは、やっぱり万国共通だなあと。

2018-01-26

問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」



問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」
ダイヤモンド社(2001)
齋藤 嘉則  



正月によんだ問題解決プロフェッショナルの発見編

ある問題を解決したい場合、人々は解決するためのツールを探そうとする。がしかし、ツールを頑張って探し、工夫して使っても、問題が解決しない場合がある。それはなぜか?問題の捉え方が悪いからだ。問題のとらえ方を間違えると、問題解決のツール選定も同時に間違える。いわゆる筋悪の問題設定というやつだ。というわけで、この本は、どうやって問題をとらえるべきか?、つまり、問題発見プロセスのノウハウについて書いてある。その意味で、この本は、問題解決プロフェッショナルのさらに上位に位置する本だ。

問題発見で大事なことは、前提を疑うことだ。目の前の業務は、なぜ、この手順なのか?一つ一つの手順の意味を問い直す必要がある。それを著者は、問題発見の4P(Purpose・Position・Perspective・Period)と呼んでいる。初めに、4Pで目の前の問題を再認識し、さらに4P間の関係を再構築する。それおこそが、あるべき姿だ。あとは、あるべき姿に向けて目の前の業務を具体的に変革すればよい。この、現状を正しく認識し、描いたあるべき姿と現状とのギャップが問題発見そのものである。

書いてあることはもっともなことであり、解決編と同様に、さらりと読める。しかし、なんとなく理解できることと、実際に行動できることとの間には、大きなギャップがあり、それが、市井のしがないサラリーマンと、かの有名なマッキンゼーのコンサルとの違いでもある。そして、この本に書いてあるようなことを、コンサルの営業先で、自分の実体験に基づき、その会社の問題に引き寄せて、滔々と、しかし、さらりと話すことができたら、それはそれはたくさんの注文が取れるはずである。

気になったのは、あるべき姿を構想するということだ。正直なところ、経営戦略やマーケティングという分野は、それなりに定型化=あるべき姿がすすんでいる。物流や経理も、学者が調べたことがたくさんある。ということで、わざわざ自分でゼロから考えるよりも、単純に、学者の理論を、目の前の改善したい業務に当てはめる方が簡単なような気がした。がしかし、たとえそうだとしても、他人の気持ちになり(Position)、目の前の物事を時間軸と視野(Period・Perspective)広く、あらためて本質を考え直す(Purpose)ことは、手あかにまみれたサラリーマンだけでなく、全ての人の全ての人生の場面で、とっても大事なことなはずなのでございます。

2018-01-21

モテキ

モテキ(2011) 東宝



さえない30男が、ある日突然、美女からモテるようになって当惑するラブコメディー

女性向けの'シンデレラストーリー'の映画やドラマはたくさんあるけど、というか、ほとんどがそうだけど、男性版の'シンデレラストーリー'は、滅多にお目にかからないように思う。モテキは、簡単に言ってしまえば、男性版シンデレラストーリーだ

女性版シンデレラストーリーは、わかりやすい。例えば、見た目も生活も地味な派遣OLが、ある日突然、3K(高収入・高学歴・高身長)を絵にかいたような男性に見初められる。自信がない自分を、地位も名誉も金もある男が、自分の中に隠されていた美貌や才能を引き出し、美しく才能豊かな女性に成長していく、といったパターンだ。

モテキの主人公の幸世は、30にもなるのに、出版社の派遣フリーライターの上に、仕事もできない。その上、部屋は汚いわ、仕事場でも、童貞童貞と言ってバカにされている、何のとりえもない男。がしかし、なんだか知らないけど、ある日突然モテるようになるのは、まさに男性版シンデレラストーリーそのものだ。だけど、この映画が女性版と違うところがあるとすれば、主人公の幸世は、最後まで、さえないバカな男というところだ。劇中を通して、仕事上でも人間としても、なんら成長がないグダグダ感満載の幸世だが、最後の最後で、いったんフラれたはずのヒロインの長澤まさみと結ばれてしまう。女性は、男性のサポートで、自分の成長を願い、男性は、女性が、ダメな自分をそのまま愛してくれることを望んでいる、とも読める。

劇中を通して、長澤まさみは、驚異的な可愛さがあった。見た目はもちろんのこと、愛嬌の良さ、気立ての良さ、尻の軽さは、男性を引きつけてやまないと思われる。音楽も良かった。ただ、今聞くと、何となく時代を感じる選曲でもある。

男性に自己肯定感と女性に対する自信を与えてくれる映画