2016-05-09

こころを動かすマーケティング


魚谷 雅彦  (著)
ダイヤモンド社 (2009/8/6)



訳あって読んだ本
荒っぽい言い方をすると、魚谷さんがライオンの営業マンから、MBA留学を経て、グローバル企業の日本トップにまで上り詰めた成功談を、マーケティングという視点から書いてある。

思ったことは二つ。

(1) 一昔前のマーケティングが功を奏した時代の話
(2) 優れたリーダの資質

といったところです。

(1)は、冷たい言い方だけど、書いてある内容は一昔のマーケティングだなあと、本当に強く思った。マーケティング部や宣伝部が、良い(かっこいい)イメージのCMをメディアに大量の投下して、営業部門と消費者をリードする、といった感じだ。最近、この手の販促をする会社が思い当たらないし、見かけない。よく思うのが、CMとかメディアが、かっこいい理想的な消費生活を消費者に提示できなくなった、とよく思う。魚谷さんが活躍していたた時代は、せいぜい10~15年前。実は、そんなに大昔でないけど、彼が駆使したマーケティングが、すごく古臭く見えるのは、この間、それほどまでに世の中が変化した結果なんだろうと思うわけです。

(2)は、魚谷さんが、リーダーとして、関係部署を強力にリードして成功に導いたという体験談のことです。ビジョンを示し、現状に疑問を提示し、みんなを鼓舞し、成功に導く。グローバル本社との板挟みはいろいろあったのでしょうが、自分のビジョンに向かって、関係者をまとめ上げていったということが、すごくよく伝わりました。が、彼が革新的なビジョンをかかげるたびに、部下や取引先が感激のあまりに涙を流したり、称賛の嵐が吹き荒れるのは、本当であれば素晴らしいのですが、何となく出来レース感、あるいは、魚谷さんの専制君主感を逆に感じてしまうというのも事実なのでございます。

正直なところ、僕はゲスな人間なので、成功話を得意げに書かれてもあまり面白くなく、むしろクラフトの時の苦労話のほうが面白かったです

なんとなく、もうこんな牧歌的な時代には戻れないのではないか、という思いを強くした、というのが最終的な感想なのでございます

2016-05-08

ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学

ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学
入山 章栄  日経BP社 (2015/11/20)



今年のGWは、すごく久しぶりに、学者が書いた経営学の本(一般向け)を読んでみた

一言でいえば、サラリーマンやってれば、誰でも何となく感じる疑問、例えば、

・リーダーシップとは何か?それを発揮しやすいマネージャーとはどんな人?
・ポジショニングと人材、どっちが利益に貢献するのか?
・ポーターの経営戦略は、ドックイヤーと揶揄されるITベンチャーでも役立つのか?

と言った疑問に、実証(データ)科学としての経営学が、どんなふうに答えるのかを、まとめた本。

どの話題も、とっつきやすく、それでいて、きちんとデータに基づいて、現時点の結論をわかりやすくまとめているところが素晴らしい。筋書きもシンプルで、スルスルと1~2日で読める、というか読んだ。

この本を読んで初めて知ったのだが、ポーターやドラッガー、クリステンセンが、入山さんが目指す実証分析や理論分析で評価されてきたた学者ではない、ということだ。もちろん、彼らが偉大な学者ということには、入山さんも異論がない。で、なんで、そんなことが成り立ったかといえば、経営学がまだ若い学問で、意地悪な言い方をすれば、ほかの社会科学(経済学とか)にくらべて理論らしい理論がないからだったから、と言っている

これを見て、何となく思ったのが、そういえば、社会学にも、論文を書かなくても偉くなった人いたかもねということだ。たとえば、上野千鶴子は、社会学では、たぶん重鎮なんだろうけど、業績のほとんどは、本を書いたことであって、査読つき論文は、ほどんどない、あるいは、立場がえらい割には少なすぎる気がする(たぶん)。なんかの本で、上野千鶴子がアメリカの大学に留学?したときのことが書いてあったけど、煎じ詰めると、レトリックを重視する私=上野千鶴子のスタイルでは、英語を使って勝負できない(=つまり、自分の英語力では、ネイティブを煙に巻くような議論はできない)から、日本に帰ってきた、といったことが書いてあった。自分の主張する内容より、その場の議論の勝敗のほうが重要だといってのける彼女は、一体何者なんだろうか、と思ったものだ。

残念ながら、この本を読んで、またほかの経営学の本を読んでみたいとはならなかったのだが、まあ、読みやすかったし良かったのではないのでしょうか。あと、この本に書いてある内容は、一流紙の査読付き論文の折り紙付なのは事実でしょうが、では、これが経営学の最先端の話題だったのかが気になりました。もちろん、内容の読みやすさとのトレードオフなんでしょうが。