2020-08-16

効果検証入門 ~正しい比較のための因果推論

効果検証入門
~正しい比較のための因果推論/計量経済学の基礎
安井翔太(2020) 技術評論社

 [表紙]効果検証入門 ~正しい比較のための因果推論/計量経済学の基礎

因果関係と相関関係を混同しちゃダメという話を初めて聞いたのは、たしか統計の授業だった。そして時は流れ20数年、いまや実務家までもが、因果と相関の違いを口にするようになった。がしかし、じゃあ、因果関係をどうやって立証すればいいのかと問われると、ふと困ってしまう人大半。多少、気の利いた人ならばABテストするしかないと答えるはず。しかし、現実的には、単純なABテストできる物わかりがよい状況ばかりじゃない。ABテストができなかったり、あるいは、すでにキャンペーンをした後から、効果(=因果)を知りたいというグタグダなケースも、少なからずある。

因果関係とは、実務的に言い換えると効果検証のことだ。そして、効果検証は、開発・計量経済学で発展した。なぜか?たとえば、先進国は、途上国にODAなどで多額の開発資金を投入している。が、使ったお金は税金。その効果を納税者に説明する義務が、政治家や役人にはある。で、経済学者と統計学者は協力して、実験が難しい状況で効果測定するすべを考えた。そして、そのノウハウは、いまやわれわれ実務家に広まりつつある。しかも、PythonやRを使えばタダで。そのエッセンスを手っ取り早くつかみたければ、この本を読めばいい。

一般的な回帰による検証を試すと同時に、その限界を示す。そして、本題の傾向スコアと回帰不連続デザインの説明に進む。Rコードも記載していて、この上なく親切。星野先生の本を先に読んだ(→といっても全部理解したわけではない)身としては、先に読んでおきたかったと思うこと数知れず。

「原因と結果」の経済学・学力の経済学の続編