チカーノになった日本人(2019)
たまたまYoutubeを見ていたら、この主人公(井上ケイ)が覚せい剤で再び逮捕された田代まさしのYoutubeを引き継いでいた。なんとなく見始めると、淡々と語る言葉とは裏腹に、想像を絶するような犯罪人生に興味がわき、思わずNetflixで映画も見てしまった。
法律を守り、スマホを見ながら運転することに罪悪感を感じる自分からすると、この映画がどんなに興味深いからと言え、彼の人生を、かっこいいとか、社会復帰して立派だなんて言うことはできない。麻薬を売りさばき、一般人を脅し、時には、暴力で相手を痛めつけ大金を稼いていた、と主人公は淡々と語る。穏やかな語り口からは、極悪なヤクザだったことなど連想できない。さらに、服役後は、刑務所で学んだカウンセリングで育児放棄された子供や元服役囚のサポートに注力している。
とはいえ、いくら彼が社会復帰したとはいえ、ヤクザ時代に不法に巻き上げた他人の財産や、痛めつけた人生が戻ってくるわけではない。がしかし、そんなことは、本人が一番よくわかっている。彼ができることとは、自分が犯した過ちに至る道を社会から減らす努力をすることだけだ。それが、この自伝的ノンフィクションであり、育児放棄されている子供や服役囚のサポートである。
この映画を、決して美談にしてはいけない。と同時に、彼の経験からも、社会は学ばなくてならないのだろう。