転職した理由はいろいろある。その中でも一番大きかったのは、このままだと、気がおかしくなるか、体を壊すかのどちらかだと思ったからだ。
最終出社日が近づいたある日、世間並みに、客先のご担当者さまところに挨拶に行った
ご担当者さまとは、1~2年の間、ほぼ毎日のように直接やり取りをした
正直なところ、無理難題を言われて、相当、苦しんだ
ただ、良い経験をしたというのも、同じく正直な感想だった
客先のオフィスで、暫くブラブラしていたら、彼が自分のデスクに戻ってきた。
そこで、机まで歩いていき、転職することを告げた。
すると、彼は、無邪気に、こう切り出した
「ねえ、ねえ、僕らのせい?僕らが、無茶言ったからなの?」
たしかに、そうなのだ。
しかし、客先のオフィス。こんなこと肯定できるワケない。
まだ、ぼくは、会社を辞めていないのだ。
そこで、こう答えた。
「いえ、貴重な経験をさせていただいて、大変感謝しております」
と、事実の半分だけを伝えた。
すると、彼は、なぜか、さびしそうに
「そう・・・・」
と答えた。すくなくとも、自分からは、そのように見えた。
いまでも、彼がなぜ無邪気なことを言ったのかよくわからない。
僕は出入りの業者であり、彼は、発注者なのだ。
僕自身、両者には大きな溝があって、それを超えることなど不可能だと思っている。
彼は、僕に、一体、何と答えて欲しかったのだろうか?
今でも、その時のことを、たまに思い出す。