マーケティング・リサーチの寺子屋
◆『ビジネスのためのデザイン思考』
以前の“モノづくり”は、モノにコトの知やデザインを施すことが“付加価値”であり、そのことで差別性を築いてきたのでしょう。だからモノはどんどん多機能化することになったのではないかとも思います。
つぎに、コトの知のみでの差別性が難しくなり、記号性をまとうことで“付加価値”を与える時代が来ました。『なんとなくクリスタル』(これまた古い^^;)の世界です。本質的な差異はなく、モノのもつ記号性自体が差別性となり、意味を持ちました。しかし、記号による差別性にも限界が来ます。ほとんど差別性のない商品が世の中に溢れるようになります。
この段階において求められるのが、顧客にとっての本質的な価値を起点に、顧客の生活、体験、コトという次元での新たな世界を生み出すことです
◆『デザイン思考が世界を変える』
「顧客に何が欲しいかと尋ねたら、もっと早い馬が欲しいという答えが返ってきただろう」と述べたヘンリー・フォードは、この点を理解していたのだ。(p.55) そういった(=創造的な)アイデアやコンセプトは、専門のコンサルタントを雇ったり、「統計学的に平均的な」人々にアンケートを行ったりすることで生み出されるものではない。(p.57 )
まず1つ目、「ビジネスのためのデザイン思考」について。
まあ、えらそうに言えば、書いてあることは、まあ、そーかなーと思えますね。ただ、書き方なんですけど、「モノ」とか「コト」とか「記号性」とか、、、いったい、なんでこんなに漠然とした単語を使うんだろーって感じです。いつも思うのだが、エスノグラフィーとか言い出し始めた最近のリサーチャーの文章って、質的研究ばかりやってる社会学者の文章みたいなんですよねー。
まあどうでもいいので、つぎ「デザイン思考が世界を変える」について噛みついてみる。
この例を読むたびに思うんですけど、そもそも顧客が「車をほしい」なんて答えるわけないと思う。だって、だれも「車」なんて物体があること知らないんでしょ。世の中にないから、フォードさんが発明したわけですよ。そんなわけで、この批判、そもそも無意味だと思う。
思うに、リサーチの価値は、顧客が「もっと速い馬がほしい」と思ってることを、事業者が知ることじゃないんですか?。で、事業者の役割は、、自分たちのビジネス環境で、顧客の要望である「もっと速い馬」を実現するためのアイデアを考えることですよ。で、もし、アイデアがうまく実現すれば「クルマ」って商品を発明できるんでしょ。なんとなく思うけど、顧客が「速い馬がほしい」と答えたとしても、クルマ発明できたのが、ヘンリーフォードの功績なんでしょうかね。たぶん、それはスティーブジョブスも同じで、「ネットができる使いやすい携帯電話がほしい」と消費者が答えれば、iPhoneを開発する気がする。調査結果を自分の事情環境でどう解釈するかは、事業者の役割そのもの。
といいつつも、調査が役に立たないと思うのも否定しきれない。ってのは、多くの場合、調査結果は、数字やグラフの羅列で、さらに悪いことに、多いとか少ないとか、増えた減った以外の事実を見出せないことが多いはず。原因の一つは、リサーチャーの力量不足だと思う。リサーチャーは、社会科学と相手のビジネスに通じていない人が多く、調査結果がビジネス上・社会科学上で何を意味しているのか理解できないことが多いわけです。報告する人がわかっていないんだから、発注者が理解できるわけない。まあ、全てそうでないと思うけど、すくなくとも私の周りはそんな感じですかね。つまり、調査が役立たないのではなくて、使えないリサーチャーが多いってだけかもしれない。まあ、自分を例外として扱える自信は皆無なのだが。
もしかしたらリサーチができるほどお金に余裕があるビジネスは、もはやリサーチしても、成長の機会がそう簡単に見つからないくらい市場が成熟しているのかもしれない。だから、リサーチしても、たいした発見もないし、発見できるわけもない、、、、といったところかもしれないなどとつれづれと思った休日なのでした